著者・南木佳士氏は、「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞受賞後、医業と作家業を兼ねる過酷な日々のなかで、突然、パニック症候群におそわれ、やがてうつ病を発症します。
生き延びることでせいいっぱいだった苛烈な日々をおくるなかで「阿弥陀堂だより」などの名作を発表しますが、心身の不調は、依然、回復の兆しを見せません。
ところが10年ほど前のある日、偶然「山」と出会い、それまで感じたことのない「快」を感じ、以降、今日に至るまで、地元信州の山々を中心に多くの山行を重ねてきました。それらの記憶は小説やエッセイで作品化され、2008年に発表された『草すべり その他の短篇』(文藝春秋)では、泉鏡花賞を受賞、翌年、同作品で芸術選奨文部科学大臣賞をダブル受賞しました。
本書は、南木氏が2008年以降に登った、北アルプス・笠ヶ岳から槍ヶ岳、浅間山、南アルプス白峰三山などの山行経験をもとに、著者初の試みである紀行文=山行記というスタイルで記された、はじめての紀行文集となります。
1951年、群馬県生まれ。作家・医師。1981年、難民救援医療日本チームに参加してタイ・カンボジア国境に赴き、同地で「破水」の文學界新人賞受賞を知る。1989年、「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞受賞。2008年には山登りを素材とした『草すべり その他の短篇』(文藝春秋)で第36回泉鏡花文学賞、2009年に第59回芸術選奨文部科学大臣賞をダブル受賞。おもな著書に『冬物語』『阿弥陀堂だより』『医学生』『急な青空』『海へ』『冬の水練』『からだのままに』『トラや』(すべて文春文庫)ほか。
本書は、月刊山岳雑誌『山と溪谷』(山と溪谷社)に、3度にわたり発表され(2008年12月号・2010年1月号・2011年1月号)、多くの読者の共感を得た北アルプス・浅間山・南アルプスの山行記三篇をさらに推敲し、山を下りてから去来するさまざまな想念をつづった一篇を加えました。
巻末には、作品関連略図が付いているので、登山コースに不案内な方でも無理なく読めます。
カバーは、版画家・造形作家の木村繁之氏が、本作品のために制作した陶彫刻作品です。
南木佳士『山行記』 (価格:1575円)
体裁:四六判簡易フランス装224ページ
発売日:2011年3月18日
ISBN:978-4-635-32003-0
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